LIFE IS ARABESQUE

インターネット上でまだ話されていないこと

最近聴いている曲 2022年11月編(2)

こんにちは!忍です。

引き続き2022年11月に良く聴いていた曲の紹介をしていきます。

今回も6曲紹介。

PLASTIC GIRL IN CLOSET「Kiss」

作詞:高橋祐二 作曲:高橋祐二

収録:『ekubo』(2012/4/25)、『LESSON 1』(2018/1/16)※セルフカバー

2003年からインディーズシーンを中心に活動しているスリーピース・バンドPLASTIC GIRL IN CLOSETの2012年の楽曲です。

シューゲイザーに根ざしたサウンドを基に美しいメロディーが展開され、その上に幻想的な歌詞が乗ってくる。My Bloody Valentineケヴィン・シールズさんを彷彿とさせる高橋祐二さんの儚げな歌声がとてもきれい。

Parannoul「Beautiful World」が好きでこの曲を知らない方がいたらオススメしたいです。どちらもピアノのフレーズを軸に進行していく曲だからか、どこかに共通的な美しさがあると思いました。

「ココロにキス」「解けるキス」というコーラスが頭に凄く残って、よりこの曲にのめりこめる様になっているというか。サウンドは間違いなくシューゲイザーなんですが、単にノイズの心地よさに浸るだけで終わらせずに、馴染みやすいサビを作ってJ-POPとしても聴けるようになっているのがこの曲の凄さなのかなと感じました。

今年の夏に高校の友人にドライブに連れて行ってもらいまして、その時に教えてもらった曲なんですが、初めて聴いた時は本当に「これ、滅茶苦茶いいね。」以外の感想が出てこなかったです。その友人には色々な音楽を教えてもらっているのでいつも感謝しています。

ちなみに2018年の『LESSON 1』にはこの曲のセルフカバーが収録されているのですが、上記のコーラスはSpiral LifeSCUDELIA ELECTROで活動されていた石田ショーキチさんが歌われています。そして高橋祐二さんのボーカルも心なしか石田ショーキチさんに寄ってきているように感じられて凄く新鮮な気持ちで聴けるカバーになっています。サウンド面も石田ショーキチさんがプロデュースしたという事もあり、ミックスや音の配置など様々な箇所からかなりの変化を感じられます。

石田ショーキチさんのSAT RECORDSに移籍する2017年までは楽曲を宅録で作られていたという事実にただただ驚くばかりです。まだ全部を聴けてないのでこれからも聴いていきたいし、いつかライブがあるなら行ってみたいとも思うバンドです。

 

ZZ「サムライブルー

作詞:ZZ・ULTRAS 作曲:ZZ・ULTRAS 編曲:ZZ

収録:『サムライブルー』(2006/5/17)、『A to ZZ 2 Sound & Vision Extra』(2007/1/24)


90年代後半~00年代前半に活動していたavex所属のミクスチャー・ロックバンドZZの2006年の楽曲です。

ちょうど先月の頭にサブスク解禁されたという事を知って、喜びに浸りながら聴きまくりました。

曲名から分かる通り2006年W杯サッカー日本代表の応援歌としてリリースされていますが、私がこの曲を知ったのは『燃えろ!熱血リズム魂 押忍!闘え!応援団2』に収録されていたからです。(今は『osu!』というシミュレーターばかりが有名になり元ネタが認知されているのか不安になりますが、本当に良いリズムゲームなのでDSを持っている人全員にプレイして欲しいと思っています。)

 

「思い出補正」の一言では片付けられない魅力がやっぱりあるなと、2022W杯を見ながらこの曲を聴いていて思いました。この曲が持っているような「わかりやすさ」が飽きられた末に辿り着いたのが現状のJ-POPシーンなのではないか…?という思いがあります。

「いや、言いすぎだろ!」というのはその通りなんですけど、だけど、

さぁ 行け サムライブルー

きっと いつまでも どこまでも

挫けぬ強さ 掴もうぜ

さぁ 行け サムライブルー

風を切り開け 歩き出せ

輝く時を 刻もうぜ

いや、やっぱりこんなわかりやすいサビは今どき見ないと思いますよ。

今よりも聴くもの・観るもの・読むものがまだそこまで細分化されていなかった時代だからこそ為せたのかもしれないし、今同じ様な曲が出てもそこに肯定している自分が居るか判らないというのはありますけど…カウンターアクションとしての「わかりやすさ」を追求する動きがもう少し見られてもいいのではと思います。結局それは私個人が「90~00年代リバイバルを求めているというだけの話になるんですが…。

 

ちなみにこの曲で一番好きな部分は「いいな、いいなじゃ未来ないなフリーター」という歌詞です。応援歌なので当然全体的にポジティブな歌詞なんですがここだけ現実にフォーカスして刺してくるのが何か怖いし、いきなり緊張感が出る。当時の情勢を踏まえての歌詞だとは思うんですが。

この曲自体は8thシングル「Samurai Crew」が原曲になっているんですが、聴き比べてみるとかなり雰囲気が違います。サビだけが同じで他は作り変えているという事なのですが、それって原曲に引っ張られないという意志が無いとできないと思うので、ZZというバンドの持つメンタリティの強さと作る曲の幅広さを感じました。

 

GRAPEVINE「風待ち」

作詞:田中和将 作曲:亀井亨 編曲:GRAPEVINE根岸孝旨

収録:『風待ち』(2001/7/18)、『Circulator』(2001/8/1)、『Best of GRAPEVINE 1997-2012』(2012/9/19)

93年に結成され、未だなお名曲を作り続ける凄すぎるロックバンドGRAPEVINEの2001年の楽曲です。

説明不要のバラード。良いメロディー。情景の浮かぶ歌詞。

良い曲です。一回聴けばそれで分かる。

「スロウ」「光について」をリピートしまくっていた自分からするとこういった曲もあるんだ…という驚きがまず最初に来ました。この曲を聴いていると、OasisDon't Look Back in Anger」を聴いている時の気持ちに何となく重なってきます。GRAPEVINEOasisも全然聴けてないんですけどね…

歌詞がやっぱり良いですよね。

待合わせの人の隙間歩き慣れたけど

あなたなら心の隙間見抜きそうな気がした

どれもこれも良すぎる。ちなみに自分が一番好きな歌詞は、

髪を少し短くした

です。この一行で時間の隔たりを作り出しているのがスゴテクすぎる。文学だろ(実際、文学でいいと思います)。

 

(ここからは全然関係ない思い出話になります。)

フォロワーの方とリアルでお会いした時にこの曲の話題になったのですが、お相手の方がすかさずこの曲の歌詞を詠唱し始めて、自分はニコニコしながらそれを聞くというとても良い時間がありました。

後、この曲の歌詞と一緒に中原岬(『NHKにようこそ!』)の画像を貼ってツイートしたらフォロワーの方(上記の方とは違う方です)から「きめえな」と言われた事も良い思い出です。

 

Anatomia & 釈迦坊主(Shaka Bose)「Flower」

Produced by 釈迦坊主(Shaka Bose)

収録:『Flower』(2018/4/21)※デジタル限定


以前も紹介しました釈迦坊主さんと、高校生ラップ選手権で印象的な活躍を見せ、心地よいフローで音源でも存在感を放ったラッパーAnatomiaさんの2018年のコラボ楽曲です。

神秘的なビートはProduced by 釈迦坊主(Shaka bose)との事ですが、Hookの部分はやはりEvil Needleの影響を強く感じます。2015~2017年辺りの音源でEvil Needleのトラックをベースにラップしている楽曲がいくつかあるのですが、どれもこれも良い曲なので是非聴いてもらえればと思います。「Transparent vapor」やCPCPC「Hands」は特に聴くべき。

 

全体的に歌唱部分が多くあまりラップを聴かない人にも馴染みやすい曲かなと思います。メロディーがとにかく良いので頭に残る。その上でラップパートは緩急を付けてくるのでビートも相まって心地よい4分間を作り出しています。

以前「Not Human?」を紹介した時に「言葉の意味内容よりも音としてどう聴こえるか、どう響くかを重点的に意識したフローが特徴的」と述べたのですが、釈迦坊主さんのラップの凄い所はリリシストな一面も共存する時があるという事なんです。

いつからか俺は目を
閉じたまま暗い夜を受け入れて
不確かでもいい 目には映らないよ
俺の世界を彩る blue
人知れずに描いた夢の 続きの迷路
いろいろ面倒 今だけは
何をすべきとか考えない適当じゃダメ?

これをメロディアスに、だけれどリズムも意識して歌い上げれるのが釈迦坊主さんの凄さだなと感じますね。聴いたら分かると思います。

Anatomiaさんのラップも最高で、特徴的な三連符のフローがやっぱり良い。限られたモーラ数に言葉を上手に詰め込む天才だと思います。

俺は special
ろくでもない life が
ふとした瞬間に
自分らしく見えたんだ
もう概念も取っ払う 最高じゃん
間違うこともあったけど
自由を取り戻しに行こう

熱さのあるリリックです。

Anatomiaさんの参加作品では「Oort」「Break Fast Club Remix」もオススメです。前者はこの曲と同じく釈迦坊主さんとのコラボ、後者はマイクリレー形式で参加者全員違った魅力を発揮している名リミックスになっています。

 

syrup16g「Everything With You」

作詞:五十嵐隆 作曲:五十嵐隆

収録:『Les Misé blue』(2022/11/23)


皆が大好きなロックバンドsyrup16gの今年の新譜からの1曲です。

正直に話すと、つい最近まで「生活」とあと数曲しかまともに頭に残ってないぐらいのニワカだったのですが、新譜を聴いて完全にハマリました。ライブにも行きました。

新譜を聴いてまず第一に、20年変わらず同じ純度で歌を届けてくれる凄さというのを身にしみて感じました。ただ、20年前とは明らかに違っている部分もあって、それがこの曲に分かりやすく現れていると感じました。簡単に言うと「ポップネス」。

解散前のsyrup16gにポップさが無いとは全く思わないんですが、再結成後のこのタイミングでよりJ-POP感を増していくバンドというのは他に居ないのではないのでしょうか。

サビのメロディーを聴いて強く感動したんですよね。「J-POPだ…」となって。最近の曲で言うと秦基博泣き笑いのエピソード」と同じぐらいのJ-POP感。

メロディーだけではなくて歌詞からもポップさを感じました。「後の祭りで ヤバって叫ぶ」「三年寝太郎も 目が醒めるかな」等、ちょっとクスっと来るワードセンスで暗い内容も明るく感じさせる所が凄い。

個人的には神聖かまってちゃんの歌詞にもそういう凄みを感じるのですが、syrup16gは普遍的な暮らしに潜む暗い気持ちを引き受けてポップに歌っているように聴こえるという点で違いがあると感じます。神聖かまってちゃんは時にファンタジーに、時にの子さんの日常や心象風景にクローズアップして歌っているというのが分かりやすいので。

 

五十嵐隆さんの歌声が全く衰えていないのがヤバすぎるな…とライブに行って思いました。この曲を聴いた時は少しうるっと来ました。

 

WurtS「僕の個人主義

作詞:WurtS 作曲:WurtS

収録:『檸檬の日々』(2021/3/17)※デジタル限定


2020年に活動を始めた、Youtube/Tiktok発の21世紀生まれの音楽ソロアーティストWurtSさんの2021年の楽曲です。

syrup16gのライブに行った時に後ろのお客さんが「アジカンのギターロックとラップを混ぜた感じ」と形容していたのを聞いたのですが、概ねその通りだなと思いました。(何様なんですか)

根底にはアジカンがやっぱり居ると思うんですが、そこにシンセだったり四つ打ちだったりのダンス・ミュージック要素を取り入れているのが面白いと思います。ありそうでなかった感じ。タイトルは夏目漱石「私の個人主義」から引っ張ってきているのかなというふうに、文学作品からの影響も感じられるのがなかなかルーツの複雑さを物語っていますよね。『檸檬の日々』はおそらく梶井基次郎からですよね。

これだけ書くと小難しいように思われるかもなんですが、音楽はとにかくノレて聴きやすいです。イントロのクラップ連打が激アツだし普通思いつかない。サビ前の舌打ちは思春期に基づく若さを感じて良いです。

メロディーはとにかく歌いやすい。パターンも少なく繰り返しが多いので覚えやすい。なにより最高音が低めなのでカラオケで余裕で歌える。本当にありがたいことです。

2020年代はWurtSが来る。というか、来て欲しいです。

 

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こちらはプレイリストになります。

次回も引き続きサブスクで聴ける曲を紹介します!

ひとまず、ありがとうございました~